柴犬のお尻愛好会
言われたことを理解できなかった。
たっぷりと間を置いてから、「は?」とようやく言葉を発する。
「中村くんが野球部を退部したって橋本(はしもと)先生に聞いて」
副島は頬をピンク色に上気させ、きらきらと輝く瞳で俺を見ていた。
「ちょっと、待って。色々と理解できない」
副島の前にパーに広げた手を出し、制止をかける。
副島は首を傾げた。
「橋本先生ってうちの担任の?」
「そうです。我が柴犬のお尻愛好会の顧問でもあるのです」
橋やん、何してるんだ。
橋やんというのは、橋本先生のあだ名だ。
どうしてそう呼ぶのかは知らないが、一年の頃にはそういう呼び名が定着していた。
橋やんはまだ三十代だったか。教師の中では比較的若い方で、生徒と仲がいい男の先生だ。