柴犬のお尻愛好会
「中村くんは去年、野球部を辞めてから、新しい部活に入ることなく、体験入部もせずにぼーっとしていると聞きました」
情報源は橋やんってところか。
「うちの高校は、絶対にどこかの部活に入らなくてはいけない決まりですので、いつまでもこのままとはいかないでしょ。どこかに入るなら、うちでもいいと思うのです!」
副島は胸の前で右手をグッと握った。
確かに、うちの高校には帰宅部なんてものはなく、必ずどこかの部に入るという決まりがある。
でも、それって、別に柴犬のお尻なんちゃらなんて変な部活でなくてもいいだろう。
まともな部活はたくさんあるのだから。
「とにかくさ、柴犬とかお尻とか興味ないし」
「うちは柴犬を愛でるだけのゆるい部活ですから、運動部に入るより楽ですよ」
糠に釘ってこういうことを言うのだろうか。
何を言っても話が通じない気がして、遠い目になった。
そもそも、どうしてこんなことになったんだっけ。
俺は今までのことを思い返した。