海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「ふーっ」
わたしはうんと背伸びをして、イスに座り、半紙に描いた文字が乾くのを待っている。
完璧に乾くまでにはきっと時間がかかるだろう。
わたしはひとりなことを良いことに、大きなあくびをかいた。
なんだかすごく眠たくなってきた。
机の上に腕で枕を作り、そこに側頭部を添えて眠る体勢に入ってみる。
これはたぶん一分もすれば寝ちゃう。
ーーそのとき、扉の向こうのほうから小さな足音がして、人の気配を感じた。
美帆ちゃ......?
その考えは一瞬で消えた。
だってーーすりガラスの向こうに立っているのは、
背の高い、ミルクティー色の髪の毛の持ち主だったからーー。