海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。


「......言えない」


彼はただ目線を落としてそれだけ告げた。


わたしの腕を掴む手も弱まって、ゆっくりと離れた。


わたしはもうなにも聞かなかった。


なにも発さずに、彼に背中を向けて歩き始めた。


彼は追いかけて来なかった。


......海くんなんて......


もう、知らない。

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