海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「陽葵、どしたのそれ」
俺がそう尋ねると、ひまりはなんだか興奮したように。
「あのね!!ひまり、あのお姉ちゃんにソーダのアイスぶつけちゃったの!!
そしたら、お姉ちゃんが自分が持っていたアイスくれたの!!」
「...?」
あのお姉ちゃん、とは。
陽葵の目線の先をたどると、ーーそこには高校で見かけたことがある女の子がいた。
あの子、となりのクラスの子だっけ...。
名前は...出てこない。
「律花、コート洗ってきたら?」
律花と呼ばれる女の子の隣には、彼氏であろう男が。
「すぐ洗ってきますね!!」
「俺のアイス半分こしよう」
「尚先輩優しい~」
「優しいのは律花だろ。はやくしないと溶けるよ」
「はーいっ!!」
律花と呼ばれる女の子は、走ってトイレへと向かっていった。
ふーん...。
あの子、先輩と付き合ってるんだ。
すごい仲良さそう。
ーーこれが、折山さんをはじめて目に止めた日だった。
折山さんが陽葵にあげた真っ白なアイスクリームは、牛乳のアイスだった。
牛乳嫌いな俺だけど、このアイスはなんだかおいしかった。