海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「律花...ごめん。
距離を置きたい...」
榊原先輩のその言葉に、俺の足はピタリと止まった。
「正直、律花のこと考える余裕がないんだ...」
「...わかりました」
折山さんはただそれだけ返事をしていた。
二人からは見えないように、音楽準備室を少しだけのぞく。
ガラガラと先輩が音楽準備室を去っていった。
...でも、折山さんが動く気配はなかった。
そして俺も決して動かなかった。
一分後、鼻のすする音とともに、折山さんはその場にしゃがみこんだ。
そしてそれはやがてこらえきれなくなったかのように、
泣き声に変わっていった。