海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
そんな姿に思わずぎょっとする。
「いやいや!全然いいよ!?」
そんな頭を下げられるだなんて、逆に申し訳なくなってしまう。
「いやほんと、ごめん」
「わたし、まだ日直の仕事、日誌の日付と名前と科目名しか書いてないよ!?」
海くん礼儀正しすぎでしょ!!
「それならよかった」
わたしの言葉に彼は心底安心したように青ざめた顔から表情を緩めた。
日直ってそんな大事な仕事だったっけ……?いや、大事は大事なんだけども。
「それじゃあ、黒板消しだけお願いしてもいいかな?わたし、届かないから...」
わたしがそう頼むと、海くんはなぜかとてもうれしそうに「わかった」とうなづいた。
海くんってなんだか不思議だ。
わたしのなかの海くんの印象は、たいてい無関心な表情で黙って作業する、てかんじだった。
今日の海くんは、意外といろんな表情をわたしに見せてくれて、なんだかうれしかった。