海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
海くんと二人きりなんて初めてだから、なんだか少しだけ緊張する。
わたしの黒板を消す音と、海くんのゴミをまとめる音だけが重なる。
あまりに静かすぎて、海くんは気にしていないかもしれないけど、若干気まずい。
「ね、ねえ。今日、寝坊なんて珍しかったね」
わたしは一度だけ後ろを振り返ってそう尋ねてみた。
海くんは「あ、あぁ」と少しだけ動揺したように見えた。
「昨日、緊張して眠れなくて」
「緊張?このあと、なにか用事あるの?」
「このあとって言うか......今なんだけど...」
海くんの声はだんだんと小さくなり、最後のほうが聞き取れなかった。