海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
ホームルームが終わって。
俺はまるで急ぎの用事があるかのように教室をささくさと後にした。
今から先輩のもとへと行く折山さんがどんな顔をしているのか見たくなかった。
あの渡り廊下を歩いているところさえ見たくなかった。
本当に今日が終業式で、明日から春休みならいいのに。
そしたら、折山さんと会わずに済むのに。見ずに済むのに。
きっと、冬休みの2週間のときよりは、春休みの2週間のほうが少しは忘れられるはずだ。
もう文系で進路希望を提出してしまったし、今さら変更はできない。
3年になって折山さんと同じクラスになる可能性が高くなったが、5クラスあって同じになることはきっとないはずだ。
文系は5クラスで理系は3クラスなのだ。
まだ2年生が3週間残っているというのに、俺ははやくも来年のことを考えていた。
ーーガンッ!
考えすぎていて校舎を出るところで壁に頭をぶつけてしまった。