海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「はあ......はぁ、」
斗真の言うとおりだ。
俺はなにひとつ折山さんに真っ正面から立ち向かっていなかった。
いつも逃げて自己完結してばかりだった。
こんなんだから、折山さんに振り向いてもらえないんだ。
カッコ悪いままなんだ。
いいや、カッコ悪くたっていい。
自分が納得できる終わり方なら。
自分が納得できないまま、諦められるわけ、ないじゃないか。
自分がどれほど折山さんを想っているのか、自覚してないのか?
きっぱりフラれないと、諦められるわけないじゃないか。
だから折山さん。
聞いて欲しい。
俺の気持ちを。
渡り廊下の真ん中でーー彼女の小さな後ろ姿を見つけた。
追い付いてよかった。
まだ、行かないで。
俺が折山さんの細い腕を後ろからつかんだのと、
折山さんが足音に気づいて後ろを振り返ったのはほぼ同時だった。
「好きだ」
俺の姿に目を丸くする彼女をよそに、
俺は乱れる息のなか、一番伝えるべきその言葉を告げた。