海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
言いにくいことなのかな。
「もしかして、デートとか...?」
わたしはパッと頭に思い付いたことを口にしてみた。
前日眠れないほどの緊張っていったら、入試とか面接とか試合だよね。
でも海くんにこれは当てはまらないから、...恋愛事情なのかなって。
「!?ちがうよ!?デートとか夢のまた夢だし...」
「そうなんだ」
へえ~、海くん、好きな子いるんだ。
この学年にいるのかな?
でも“だれなの?”なんてそこまで図々しく聞くことはできない。
「叶うといいね」
わたしは笑顔でそれだけ言って黒板消しを再開した。
教室の後ろにいる海くんからの返事はなかった。