海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。


「なんで折山さんと俺が..」


頭がついていかないといった様子でつぶやく彼。


それは決して嫌がっているわけではなくて、現実と思えないかのような態度。


「そういえば海くん。わたしのこといつまで折山さんって呼んでるの?」


「折山さんの名字は折山さんでしょ?」


「...じゃあ、下の名前は?」


ふたりのときくらい、下の名前で呼んでほしい。


「下の名前...」


「もしかしてわからないの?」


わざとそう聞いてみる。


「いやわかる!!」


慌てて答える海くんが可愛い。


「じゃあ、呼んで?」


海くんに下の名前で呼ばれたのは、あの書道室のときが初めてで、それっきりだ。


しかもあのときは付き合ってなかったし、わたしが寝ているあいだにこっそりとだった。

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