海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「っ...もう帰る!」
わたしは端に置いていたバッグまで向かおうとした。
「待って、律花」
「やだ!」
いつも穏やかな性格なわたしかもしれないけど、怒るときもあるんだよ。
「俺の話を聞いて」
海くんはわたしの腕を引っ張って帰ろうとするわたしを引き止めてくる。
「やだってば...!
今日は帰りたい!」
「そんなのだめ。...帰したくない」
「な...っ勝手だよ海くん!
自分のことばっかり考え......んっ」
続きの言葉は言えなかった。
海くんの口に飲み込まれてしまったから。
彼はわたしの小さな唇に、少しだけ強引に自分のそれを重ねた。