海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。


「海くん、頭上げて...!?」


「ほんとにごめん!律花のいうとおり、俺、自分のことばっかり考えて...夢中になって...」


夢中になって、キスをした。

まさに、その言葉がぴったりだ。


さっきまでのキスを思い出して、体温が上昇してくるのを感じた。


「わたし、怒ってないよ!」


むしろ...うれしかった。


海くんが、わたしに夢中になってくれて。


一ヶ月分の、キスをもらったよう。


「そんな簡単に許したら、俺、また調子乗るから...!一発ドカッと殴って!」


殴...!?


調子乗るって、また調子に乗ってキスしちゃうってことだよね...?


全くキスしないよりかは、してくれたほうが100倍いいんだけどな。


だけど、殴られないと気が済まないといった様子の海くんに、

わたしは「じゃあ...歯、食い縛ってくれる?」とベッドから下りて彼の前に座って。


ギュッ...!と固く目をとじた海くんの唇に、

チュッと音をたててキスを落とした。


「...へ?」


なにが起きたのかわからないと言った様子で、目をぱちくりさせる彼。


「これで、許す!」


わたしはそう言ってえへっと笑ってはにかんだ。

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