海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「...律花、完全に俺を殺しにかかってきてるよね...」
海くんは自分の心臓に手のひらを当てて、ため息混じりにつぶやいた。
「殺...!?」
「...ドキドキしすぎて、心臓が止まりそうだよ」
「...聞きたいな」
海くんの、音。
そっと彼の心臓に耳を寄せた。
ドッドッドッドッ...
「ほんとだ...わたしと同じくらい、ドキドキしてるね...」
嬉しいなあ...。
「同じ...?
...俺も、律花の音...聞きたい」
「...いいよ」
彼の耳がわたしの胸元に寄せられて、余計に心臓が暴れだす。
「ほんとだ...同じだね」
「うん...」
「...すごく...落ち着く」
海くんはそう言って、そのままわたしを抱き締めた。
そういえば、キスの前に、ハグが先だったね。
「もうやばい...幸せすぎて、おかしくなりそう」
「おおげさだよぉ...」
なんて、わたしもだけど...。
細身に見えるのに、ゴツゴツしてる彼の体。
その胸に、すっぽり収まるわたしの小さな体。
つぶれるくらいに抱き締められて...
海くんはどうやら、また限度を越そうとしているのかな?
「明日のクラス発表で、もし別のクラスになっても...
俺以外の男、見ちゃだめだからね」
「うふふ。もちろん。海くんもだよ?」
わたしも負けないくらい、彼をぎゅうっと抱き締めた。