海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「田中が昨日足を骨折したみたいで、教室の出入りしやすいように俺と入れ替わったんだ」
次はちゃんと聞き取ることができた。
だけど、なぜだか目線は反らされた気がする。
わたしの気のせいかな。
「田中くんが……!?そうだったんだ」
ということはここはわたしの席で間違いないみたい。
確認できたところで机に鞄をのせてイスに腰を下ろした。
後ろを振り返ると、一番後ろの廊下側の席に田中くんの姿があった。
壁には松葉杖をたてかけている。
隣の席の子と笑顔で話していて元気そうで、いちクラスメイトとして安心した。
たしかにあそこの席が一番出入りしやすく安全だ。
海くんは金曜日まであそこの席だったんだ。