海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「律花、帰ろ」
ホームルームが終わり、放課となった。
3年になってからも、変わらずわたしを駅まで送ってくれるんだね。
「うんっ!」
わたしはうれしくなって笑顔でうなずく。
そんなわたしに彼はいちいちキュンとしているとも知らずに。
ふたりで教室をあとにしようとしたら。
「おい、佐久間っ」
後ろから海くんの名前が呼ばれる。
わたしが呼ばれたわけじゃないけど、わたしも自然と振り向いた。
「シャーペン借りたまんまだった、わりい」
海くんにシャーペンを返す女の子。
海くんの隣の席のボーイッシュな子、中川真琴(なかがわまこと)ちゃん。
「さんきゅーな」
「どういたしまして」
何気ないふたりの会話を見ていると。
ーーチラリ
わたしのほうを見る真琴ちゃん。
それは、“チラリ”より、“ギロリ”に近かったのは...気のせい?
きっと...気のせいだよね。