海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。


「律花、帰ろ」


ホームルームが終わり、放課となった。


3年になってからも、変わらずわたしを駅まで送ってくれるんだね。


「うんっ!」


わたしはうれしくなって笑顔でうなずく。


そんなわたしに彼はいちいちキュンとしているとも知らずに。


ふたりで教室をあとにしようとしたら。


「おい、佐久間っ」


後ろから海くんの名前が呼ばれる。


わたしが呼ばれたわけじゃないけど、わたしも自然と振り向いた。


「シャーペン借りたまんまだった、わりい」


海くんにシャーペンを返す女の子。


海くんの隣の席のボーイッシュな子、中川真琴(なかがわまこと)ちゃん。


「さんきゅーな」


「どういたしまして」


何気ないふたりの会話を見ていると。


ーーチラリ


わたしのほうを見る真琴ちゃん。


それは、“チラリ”より、“ギロリ”に近かったのは...気のせい?


きっと...気のせいだよね。

< 204 / 220 >

この作品をシェア

pagetop