海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。


「あっ、ごめん、なんていったの?」


わたしはクリーナーで黒板消しを綺麗にしながら少し大きめな声で彼に問う。


「いや、なんでもない」


彼はそう言って戸締まりをしはじめた。


...なんて言ったんだろ。


なんとなく気になったけど、その気持ちはやがて消えた。


「俺、ゴミ捨て行ってくる」


教室のとじまりを終えて、残りはゴミを焼却炉に持っていくのと、職員室に日誌と鍵を返しに行くだけとなった。


「じゃあわたし鍵と日誌行くね」


「鍵と日誌も俺が行く」


「ええ、なんで?」


「今日寝坊したから」


「そんなのいいってば!」


海くんってばかなりの気遣いさん。


わたしは日誌と鍵を持っていくことをゆずらなかった。

< 21 / 220 >

この作品をシェア

pagetop