海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「あっ、ごめん、なんていったの?」
わたしはクリーナーで黒板消しを綺麗にしながら少し大きめな声で彼に問う。
「いや、なんでもない」
彼はそう言って戸締まりをしはじめた。
...なんて言ったんだろ。
なんとなく気になったけど、その気持ちはやがて消えた。
「俺、ゴミ捨て行ってくる」
教室のとじまりを終えて、残りはゴミを焼却炉に持っていくのと、職員室に日誌と鍵を返しに行くだけとなった。
「じゃあわたし鍵と日誌行くね」
「鍵と日誌も俺が行く」
「ええ、なんで?」
「今日寝坊したから」
「そんなのいいってば!」
海くんってばかなりの気遣いさん。
わたしは日誌と鍵を持っていくことをゆずらなかった。