海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「てゆか、用事あるんでしょ?鍵と日誌も、今返し終わったよ」
「うん、ありがとう」
彼はそれだけ言ってわたしの小さな歩幅に合わせて歩き出す。
「...先、行ってくれていいんだよ?」
わたしに気遣って合わせてくれてるのかも。
「用事なくなったから」
「そうなの?」
いったいなんの用事だったんだろう。
「明日から、絶対寝坊しない。
...せっかく隣なのに...」
最後の方の言葉は聞き取れなかった。
「わたしも毎日布団から離れたくないーってなってるよ」
「...うらやましい...」
「えっ?」
海くんはほんとうに声が小さい。
だけどもう、きりがないから聞き返さないことにする。