海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「海くんもこっち方面なの?」
正門から出て右に曲がろうとすると、彼の足もこちらに向いていた。
「......」
彼からの返事はなく、そのかわり驚いたように目を丸くしていて。
心なしか、彼がしているグレーのマフラーの中の頬が赤らんでいる気がする。
「あ、ごめん!みんなが海くんって呼んでるから、つい...」
馴れ馴れしかったかな。
「ううん。嬉しい」
「そ、それならよかった」
隣の席になったばかりのとき、わたしたちは他人みたいだったけど、今はちゃんと友達になれているみたい。
わたしも素直に嬉しかった。