海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「...じゃあ、わたしはここで」
学校から歩いて10分の駅。
わたしの家はこの駅から5駅行ったところにある。
「折山さん、家どこらへんなの?」
「えっとね、**町」
「そうなんだ」
「海くんは?」
「俺は、...秘密」
「ええっ?」
秘密かあ。
ますます海くんが謎めいてくる。
カンカンカン...
「この電車?」
「うんっ」
「そっか」
「それじゃあ、またね。っクシュン」
そのとき冷たい風がビュウッと吹いて、ブルッと体が震えてくしゃみが出た。
「寒いね~」
「土日、大寒波らしいよ」
「そうなの?やだな~っ。
それじゃあ海くん、また月曜ーー」
言い終わるころ、わたしの露になっていた首もとがふんわりとあったかくなった。
「...それ、使って」
海くんが自分が付けているグレーのマフラーを、わたしの首にそっと巻いてくれたから。
「あ、ありが...とう」
わたしはびっくりして反応が遅れてしまう。
もう発車してしまいそうな電車に、慌てて乗り込んだ。
振り返って海くんを見ると、彼の頬は寒さのせいかとても赤く見えた。