海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
海くんが優しすぎる
海くんはオシャレさんだ。
だって、グレーのマフラー、ブランドの高いものだ。
手触りも最高で、うすく見えるのにすごくあったかくて。
それを貸してくれるなんて、なんて紳士なんだろう。
びっくりしちゃったなぁ。
海くんのいうとおり土日は大寒波で、すごく寒かった。
わたしはマフラーを大事にたたんで綺麗な袋に入れておいた。
入れておいた......のに。
「...海くん」
月曜日。
わたしはいつもより早く学校へ行って、彼の登校を待った。
「お、折山さん。ど、どうしたの?」
彼は待ち構えていたようなわたしにびっくりしたよう。
「あのね、実は...」
実は、わたしの小6の弟の匠(たくみ)が、勝手にマフラーを使って、出掛け先に置き忘れたらしいのだ。
出掛け先全部に連絡して、探しにも行ったけど、見当たらず...。
わたしは正直にそのことを話した。
今日の朝学校に行く前にも言い合いをした。
「なんで勝手に使うの!?常識的におかしいでしょ!?」
「だって...かっこよかったんだもん!!」
「自分で買えばよかったでしょ!?」
てゆか、小6のくせにお目が高すぎでしょ!!
毛糸のモコモコマフラーで十分でしょ!!
あーだこーだ言い合って文句を言っても、なくなったマフラーが返ってくるわけではない。