海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。


「一番後ろだったのに、一番前に来ちゃったね」


わたしが少し笑ってそう言うと、海くんは「ここでいい」それだけ言って机に顔をふせて寝る体勢になってしまった。


あらら……朝から寝ちゃうんだ。


だけど、わたしは特に気をわるくしなかった。


だって、海くんはどこの席にいたって寝てる印象だからだ。


そして、どこの席にいたって成績優秀なんだ。


首席でこの高校を入学して、入学式では新入生代表のあいさつをしていた。


だからすごく勉強熱心な真面目な人だと思っていたのに、2年生に進級して同じクラスになって、授業中ほとんど寝ていることを知ったときはびっくりしたんだよなぁ。


だけど、成績は変わらずトップだから海くんを叱る先生はだれもいないんだ。


すごいなあ。

授業中寝てるのに、どうして勉強できるんだろ。

生まれもった才能かな?


わたしはそんなことを考えながら鞄のなかの物を机のなかにしまいはじめた。


海くんが今なにを考えているのかなんて、知るわけもなく。

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