海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
海くんの教え方はすごく分かりやすくて頭にスラスラ入っていった。
「ーー...だから左辺イコール右辺になる。わかった?」
「...」
「折山さん?」
「...わ、わかった!なんか理解できすぎて自分でびっくりしちゃって!!」
「そりゃよかった」
「海くん勉強できるだけじゃなくて、教えるのも得意なんて...すごいっ!!」
海くんは照れたように笑って。
「そんなことないよ。
実は、俺の家、中高生の塾やってるんだ」
「え、そうなの!?なんてところ?」
「名字のまんまで佐久間塾っていうんだけど。家と隣だからときどき手伝ってて。だから親の真似してるだけ」
「それでもすごい!!ってことは、授業よりも前に習ったことがあるってこと?」
「そうそう。中学のときに、高校3年間の勉強全部やらされた」
「ええ...!!!」
だから授業中寝てるのにできるんだ!!
それから海くんはわたしの一番苦手な証明を何種類も丁寧に教えてくれたーー。