海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「律花、ほんと毎日牛乳飲んで飽きないの?」
4限目であった古典の授業が終わり、お昼休みがやってきた。
お母さんが作ってくれたお弁当と、学校の自販機で購入するパック牛乳がわたしの毎日の昼食。
ストローを飲み口の穴に指していると、去年から同じクラスで一番仲のよい飯田美帆(いいだみほ)ちゃんにそう突っ込まれた。
明るくて面白くてサッパリとした性格をしていて、一緒にいてすごく落ち着く存在だ。
「飽きないよ、牛乳大好きだもん」
「律花の骨めちゃくちゃ固そう」
「そうなってるかなー?」
骨だけ丈夫になって、身長は149で止まっちゃったんだけど。
お母さんもそれくらいだから、完璧お母さんの遺伝だろうな。
「美帆ちゃんだっていつも紅茶飲んでるじゃん」
美帆ちゃんのお弁当のお供といえばペットボトルの紅茶だ。
「紅茶はやめられないよ」
「わたしもそれと同じだよ」
そんな会話をしながらわたしの机でお弁当を食していると。
「海ーっ!」
教室の出入り口から、数人の友達と後ろのほうでお昼を過ごしている海くんの名前が大きな声で呼ばれた。
わたしはそれとなくそちらに顔をやった。