海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
なんだか、一度“その考え”が浮かび上がると、すべてがそう思えてきた。
古典の辞書を借りてきたこと。
苦手な牛乳を飲んでいること。
日直のときの態度。
マフラーを貸してくれたこと。
わたしにマフラーを選んでほしかったこと。
正反対なのに、わたしを駅まで送ってくれること。
そして今日、家の用事が前から決まっていたのにわたしを優先させたであろうこと。
他にも、言葉、表情、海くんのすべてが......
“その考え”に行き着いてしまう。
「海くんが............
わたしを、好き?」
そんなこと、あるわけないのに。
海くんがわたしを好きだなんて、
そんなことあるわけない。