海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。


昼休み。


「っえ、海くんが?」


お手洗いを済ませ鏡の前で髪の毛を整えていると、

後ろで話している女の子二人組の片方の子が、“彼”の名前を出した。


わたしは心臓が小さく小さく跳び跳ねて、つい鏡ごしにその二人をチラッと見てしまった。


隣のクラスの子たちだ。


「うん...好きな子のチョコしか受け取らないって言われちゃって...」


「去年は受け取ってくれたよね...?」


「本気で好きな子できたってことだよね...。だから私、義理だから!て慌てて言ったの。そしたら義理でもごめんねって...」


「義理チョコも受け取らないことにしてるんだ...」


「そうみたい...」


そんな会話を終えて、二人組はお手洗いを後にしていった。


わたしの心臓は小さく小さく脈を打ったままだった。


偶然、耳にしてしまった。


海くんが...。


ねえ海くん。


海くんはだれが好きなの...?

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