海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
海くんはたしかに“家に忘れた”と言った。
もしロッカーの中にあったとして、取りに行くと先生に「事前に準備しとけ」って怒られるから、わたしに借りるのは分かる。
だけど、ちゃんと机の中にあった古典の辞書。
……どうして、わたしに借りたりなんかしたんだろ。
机の中にあるの忘れてたのかな?
うーん、なんかおかしい。
まあ、いっか。
辞書くらい、いくらでも貸すし。
そう一区切りつけて、またお弁当を再開していると。
「あれ!?海、牛乳飲めるようになったのか?」
辞書を受け取った中村くんは自分のクラスに帰ることなく海くんに話しかけはじめた。
隣だからはっきりと会話が聞こえてくる。