海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「ありがとう」
そしてまた、さっきより大きく間が開いて。
「...律花。
勝手だって思うと思うけど、聞いてほしい。
俺、律花のこと、まだ好きだ。
あのときは俺の勝手な理由で...傷つけてごめん。
もうすぐ卒業するし、今さらなにって思うよな。
だけど...律花が好きなんだ。
もう一度俺と、付き合ってほしい」
尚先輩の瞳は真剣だった。
わたしのこと、本気でーー。
風が吹いて、カタカタと窓が揺れる。
「......か、考えたい...です」
わたしは小さくそう答える。
「...うん、わかった。卒業式のあと、またここで待ってる」
「...わかりました」
「今日来てくれただけでもうれしい」
尚先輩ってば素直だ。
こんな直球に言ってくれる。
「な、尚先輩。
これ...合格祝いです」
端に置いておいたカバンと紙袋。
紙袋の中にはあと2つ残っていて、カップのガトーショコラと、
箱に入った...ガトーショコラ。
わたしは箱のほうを尚先輩に手渡した。