海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「え!?」
尚先輩は驚いたようにそれを受け取る。
「今日たまたまバレンタインデーだし、ほしいって思ってたけど...ほんとにくれるとは...。
律花ありがとう」
「味は保証しませんよ?」
「律花のチョコよりおいしいチョコなんてないよ」
...ほんと、直球。
そんなことを言われると、照れてしまう。
「...じゃあ、帰ろうか」
「...はい」
「送りたいけど、卒業式までは...やめとく」
「......はい」
それからわたしたちはばいばいした。
尚先輩と会って、告白されて、わたしの心のなかがあったかくなったのは紛れもない事実だった。
帰り道、少しだけ変形したカップのガトーショコラだけが、紙袋の中で小さくむなしく揺れていた。