海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
温故知新、初志貫徹など、先生が配ってくれたプリントには50ほどの四字熟語が並んでいる。
「どうしよ~」
「“温故知新”にしようかな~、書きやすいし」
美帆ちゃんはさっそく決めたようで、習字道具を準備しはじめる。
「じゃあわたしは~...“花鳥風月”にしようかな」
「“花”がついてるから?」
「うん!」
「いいね~!」
鳥とか風とかちょっと書きにくいけど、頑張って書いてみよう!!
わたしも美帆ちゃんに続いて習字道具を並べた。
「海、もうちょい寄ってくんね?俺が入れない!!」
「...わざわざ俺のとなりで書かなくたっていいでしょ」
そんな会話が斜め前から聞こえてきて、わたしは持っていた筆を落としそうになった。