海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「書けたっ!!」
6枚目にして納得いく作品ができた美帆ちゃん。
わたしも同じく6枚目にして今のところいいかんじで、あとは名前を書くだけ。
というか、これで終わらせないと授業がもう終わっちゃう。
わたしは急ぎつつ慎重に、“折 山 律 花”と筆を動かす。
「そろそろ時間なので、今書いてる分で終わって、一番いい作品を提出してくださいね」
書道の先生が和やかな雰囲気でそう促す。
「ねえ律花。6枚目が一番いいって思ったけど、5枚目もわるくないかも。どっちがいいと思う?」
「うーん。たしかに5枚目もいいね。でも...名前のここのところがあれじゃない?」
「あー!ほんとだ!そうだね、やっぱりこっちにする!
律花も、最後に書いたやつが一番だね!」
「うん!」
わたしは大きくうなずいて、最後に書いた提出する分以外の作品はたたんでスーパーの袋に入れた。