海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
「ああーーーッ!!!」
外の水道で美帆ちゃんと一緒に筆を洗っていると、
書道室からそんな叫ぶような大きな声が聞こえてきた。
「今の声って、中村じゃない?」
「うん。作品破いちゃったとか!?」
「あり得るね」
そのとき、ちょうどとてもとても焦った様子の中村くんが出て来て、なにやら辺りを探してーー
バチ!とわたしと目が合い、一目散にこちらに走ってきた。
「ッ折山!!ごめん!!」
ガバッと頭をいきなり下げられる。
筆を洗う手が止まる。
いきなりすぎて着いていけない。