海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
放課後になって、わたしは美帆ちゃんとふたりで書道室に移動した。
「なんかすごい広く感じる!!」
「ほんとだね!!なんか、伸び伸び書けそう!」
授業中より、うまく書けるかも!?
わたしたちはさっそく習字道具を準備しはじめた。
「花鳥風月、だよね?」
美帆ちゃんにそう質問され、わたしは少し考えた。
「......やっぱり、“日進月歩”にしようかな」
「おお!いいじゃんー!」
日進月歩。
日に日に、絶えず進歩すること。
ーー海くんが、選んでいた四字熟語。
わたしも、書いてみたくなった......。
こんなこと言ったら失礼だけど、マイペースな海くんが日進月歩を選んだことがなんだか意外だった。
どういう理由で、選んだんだろう。
斜めから見えたけど、海くん字上手だったな。
頭もよくて字も綺麗なんて、
いったい海くんの頭のなかはどうなっているんだろうーー。