【完】死が二人を分かつまで
「まさか……あの時?」
その時、俺は働き始めたばっかりで。
家の命令で、働くことを引替えに彼女と同棲していた。
勿論、婚約という形で。
家に帰らなくても、彼女は何も言わなかった。
明け方に帰っても、彼女は笑顔で迎えてくれた。
眠らずに、待っていてくれた。
料理も、お風呂も、掃除も、何もかも完璧な状態で。
「……怪我の具合は……知ってるか?」
「確か、夏咲が一時期、手を貸していたとか。こっそりだがな。夏咲の話だと、相当大きな傷を背中に背負わされたそうだ。そして、言った」
『來斗さんの笑顔が、私は好きなんです。だから、本当の夫婦になれなくてもいいんです。子供は私がどこかで作ります。決して、彼に迷惑はかけません。立派に育ててみせますよ、それが条件ですから』
「……条件?」
大怪我をおわせた上で、条件を課したというのか。
俺のために、彼女はそれを飲み込んだのか。
「1、子供は5人。3人は男であること。
2、全身のキズは自己責任
3、これからは、お前をたしなめること……
……その他にもいろいろあるらしいが、細かいことは知らん。ただ、夏咲に笑ったそうだ」
御門から聞いたのか、正確な情報に手が汗ばんだ。