【完】死が二人を分かつまで
「接し方は分からなかったけど……自分に懸命にしてくれているのは分かっていたから、大事にしようと思ったんだ」
でも、彼女にとっては……彼女からしたら、俺に対する行動は行為や親切心ではなく、全てが家のためだった。
「『浮気は、別に構いません。ただ、ちゃんと、人は選んでくださいね。くれぐれも、家に迷惑を……』なんか、そう言われたら……もう、触れる気も起きなくて。彼女もほっとしてたから……最近、その言葉が尾を引いてな。帰れない」
「……」
すると、嘆息した吊戯。
「お前、アホか」
急に毒を吐かれ、俺は目を丸くした。
「それは精一杯の我慢じゃないのか」
「……」
「お前の家の厳しさは知っているが、なら、彼女は?これまで、彼女は本当に家のためだけにお前のそばにいたのか?幼い頃から?ずっと??」
「……」
彼女は人と関わったことがないと言っていた。
関わることを許されず、俺が笑いかけてくれたことが嬉しかったと……昔、彼女は言っていた。
「俺も何度も騙されたが、強い女ほど、何かあった時に笑うんだ。笑って、俺らを傷つける。その痛みに思考が鈍り、忘れるが……よく考えてみれば、その言葉を言った時に1番泣いているのは、女だぞ」
横に座る千華の頬を優しく撫で、吊戯は微笑む。
「それに……ああ、お前は知らないか」
「?」
吊戯が言葉をにごしたので、気になって首をかしげ、尋ねると。