【完】死が二人を分かつまで



「お前が俺の会社で働くことをあっさり許されたのも、他の女と近づいてもなんの影響もなかったのも、見張りがいなかったのも、催促がなかったのも、全て、彼女のおかげだろう?」


言われてみれば……俺は自由だった。


普通の人間のような生活をしていた。


常に見張られ、友人関係を勝手に整理され、女をあてがわれていた俺の身は、確かにここ何年も静かで自由で……家に帰っても、父には何もい言われることもなく、殴られることもなかった。


「お前が働きたがっていることを、御門が彼女に教えたそうだよ。そうしたら、自分との結婚を先伸ばして、どうか、働かせてくれと土下座したらしい。お前の家と、自分の家の親族の前で」


初耳だった。


「御門が手を貸そうとしたが、彼女は拒絶して。散々、怒鳴られ、殴られ、ひどい傷だったそうだ。お前は彼女を避けていたせいか、知らないだろう?一時期、彼女は全身、包帯を巻いていた時期があったぞ」


そう言われれば、思い当たることはある。


疲れて家に帰った、蒸し暑い夏の夜。


彼女は家の中で長袖を着ていた。


そして、手袋をしていた。


首元が隠れる服を見て、『暑くないのか』と尋ねると、


『エアコンで冷えてますから』


と、俺が帰ってくるのを見越してつけていてくれたエアコンを見て、微笑んでいた。


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