たったの3秒で
はじまり
はじまりは、そう。
君と私が出会った瞬間。
夏の始まり、階段を上るだけで少し汗をかく。
そんな日。
さっき降りたばかりの電車の窓に、夕日が差し込む。
そんな時。
「落ちたよ」
むさ苦しい空気の中を切り裂いていくように透き通る声が、私の進む足を止めた。
その人は、私が立つ二段下のところまで、鈴の音を鳴らしながら上ると、やっと同じ目線の高さになる。
「リュック、全開」
そう言いながら、私の大切な鈴のキーホルダーを渡した。
…その瞬間。
私はきっと初めて恋をしたと思う。