【完】キミさえいれば、なにもいらない。
雪菜は自分の口元を指差しながら教えてくれる。


「マジで。やっべー、恥ずかし……」


言われて俺は、慌てて口元に指を当て、ゴシゴシと拭うようにこすった。


「とれた?」


「ううん、まだついてる」


「えーっ」


だけど、ちゃんと取れていなかったらしい。


さすがに鏡は持ち歩いていなかったので、確認しようとポケットからスマホを取り出す。


カメラを起動して、自撮りのモードに切り替えて見てみたら、雪菜の言うとおり、たしかに俺の口元にはにケチャップらしき赤いものがついていた。


「うわっ、ほんとだ!カッコ悪っ」


驚きの声を上げる俺。


すると次の瞬間、横から急に、噴き出すような笑い声が聞こえてきて。


「ふふっ」


ドキッとして顔を上げたら、なんと、雪菜が俺を見てクスクスと笑っていた。


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