【完】キミさえいれば、なにもいらない。
しかもまた、初めて聞く名前。
今日の女の子はエミリちゃんっていうのか。
「でもあれだろ、遅くなると兄貴が心配するんだろ?」
「そうなのー。うちのお兄ちゃん心配症でうるさくて、困っちゃう」
「それだけ可愛がってんだよ。エミリは可愛いからな」
なんて、そういうセリフ何人に吐いてるんだろうと思いながらも、少しだけ気になって、開いていたリビングのドアからこっそり玄関を覗いてみる。
すると、ちょうどお兄ちゃんとその子が抱き合ったまま見つめ合っている姿が見えて……。
「エミリ」
「ハルくん」
そのまま熱いキスを交わす二人。
私はギョッとして慌ててソファーに戻った。
わあぁっ。やだ、見ちゃったよ。キスシーン……。
ほんとにもう、お兄ちゃんたら、全然恥じらいというものがないんだから!
っていうかあの子、彼女じゃないじゃん!なのにあんなことして。