【完】キミさえいれば、なにもいらない。
わけもなく心臓をドキドキいわせながら、文庫本を再び開く私。
だけど、読もうとしても内容が全然頭に入ってこない。
「はぁ……」
思わず深いため息がこぼれる。
なんだろう。まったく。
小説の中の恋愛は、すごく純粋で素敵に見えるのに、現実の世界の恋愛は、どうしてこうなんだろう。
お兄ちゃんを見るたびに、そんなことを思ってしまう。
フィクションと現実は、やっぱり違うよなぁって。
小説や映画のような恋愛は、現実には存在しないんだろうな。
とりあえずお兄ちゃんには一回くらい天罰が下ったほうがいいだろうな。
女の子が気の毒だし……。
そんなことを考えながら、手に持った文庫本を再びカバンにしまった。
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