【完】キミさえいれば、なにもいらない。
結局私、こういうの、頼まれたら貸しちゃうんだよね。


「はい、これ。五時間目までに返してくれたら」


そしたら彼は、大げさに喜んでくれた。


「サンキュ。すっげー助かる!授業終わったらすぐ返すな」


「うん」


「お礼の手紙も添えて」


「て、手紙はもう書かなくていいからっ!」


「はははっ。冗談だよ」


イタズラっぽく笑う一ノ瀬くんを見て、ふと考える。


私ったら、彼のこと振ったはずなのに、こんなふうに普通に話してていいのかな。


だけど、避けるのもなんだかおかしい気がするし、私だってべつに、彼のことが嫌いなわけではないんだ。


人としては好きだし、異性として好きっていうのとは違うだけで。


だから、普段どおり接するぶんには、構わないよね。


.


*


.


< 152 / 370 >

この作品をシェア

pagetop