【完】キミさえいれば、なにもいらない。
――キーンコーン。


その日の放課後。いつものようにカバンを持って教室を出ようとしたら、その後ろから突然璃子が現れた。


「雪菜、バイバイ!まったね~!」


それだけ告げると、すごい勢いで走り去っていく彼女。


相変わらずバタバタしてるなぁ。


璃子は最近バイト先のイケメンの先輩に夢中みたいで、シフトを前よりたくさん入れてるし、バイトがある日はすごく張り切っている。


だから今日も、一刻も早くバイト先へと向かいたいみたい。


おかげでここ最近はなかなか一緒に帰れなくなってしまったけれど、璃子が幸せそうなので、それはそれでよかった。


ぼんやりと考え事をしながら、昇降口を出る。


外はいつも以上に空気がじめっとしていて、見上げると、今にも雨が降り出しそうな曇り空が広がっている。


だけど折り畳み傘はカバンの中に常備してあるので、万が一雨が降り出しても大丈夫だと思いながら、ゆっくり歩いて帰った。


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