【完】キミさえいれば、なにもいらない。
ど、どうしよう。


お母さんに作ってもらったばかりの新しいバレッタなのに。


さっそく落とすなんて、最悪だよ……。


なんとかして拾おうと、しゃがんで溝の中を覗き込む。


幅は50センチほどだけれど、そこそこ深くて、手を伸ばしてもギリギリのところで水面に手が届かない。


そのうえ水が汚れているから、中がよく見えない。


でもきっと、落ちたのなら、この辺りに沈んでるはず。


なにか、長い棒でもあれば……。


そう思って近くを探したら、ちょうど細い木の枝が落ちていたので、それを持って溝の中を探すことにした。


カバンを脇に置いて、しゃがんだまま腕を伸ばし、手に持った枝で水の中を探る。


そんな中、すぐそばを、同じ学校の下校途中の生徒たちが次々と通り過ぎていく。


みんなが私のことを、変なものでも見るような目でジロジロ見てくる。


中には、クスクスと指をさして笑う人たちもいて。


「ねぇ、あの子、なにやってんの?」


「かわいそー。あそこのドブ汚いのにね。」


「うわー、パンツ見えそう!」


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