【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「いや、それはべつに、ただ……」


「やっぱり俺、雪菜が好きだ」


「……っ」


一ノ瀬くんが、私の目をじっと見つめる。


「すっげぇ好き」


熱っぽい瞳でそう言われて、なんだかものすごく胸がドキドキしてしまった。


やだ。ちょっと待って。どうしたのかな、急に。


というか、今そんなこと言われても……。


戸惑う私の手を、一ノ瀬くんがそっと握る。


「なぁ、俺たち、友達になるのもダメ?」


「……え?」


「今すぐ付き合ってとか、言わないから。ただ、雪菜のことをもっと知りたいし、もっと仲良くなりたいんだよ」


懇願するような表情で訴えかけられて、一瞬黙り込む私。


友達……か。


ふと、先ほど彼の手に貼った絆創膏に目をやる。


私のために、雨の中バレッタを必死に探してくれた彼。


正直、私のためにここまでしてくれた彼のこと思ったら、ダメなんてとても言えなかった。


むしろ、10倍くらい見直したんじゃないかとさえ思う。


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