【完】キミさえいれば、なにもいらない。
それに自分でもどこか、彼のことをもっと知りたいような、そんな気持ちがあって。


それは明らかに、今まで彼に抱いていた気持ちとは違うものだった。


「と、友達なら……」


私がそう言ってコクリと頷いてみせると、驚いたように目を丸くする彼。


「……えっ。いいの?」


「うん」


そして次の瞬間、私から手を離すと、大きくガッツポーズを決めた。


「マジで?やった!!」


子供みたいに喜ぶ彼を見て、クスッと笑ってしまう。


大げさだなぁ。そんなに喜ばなくても。


「じゃあさ、今度から俺のこと下の名前で呼んでよ」


「えっ」


さらには、突然そんな提案をしてくる彼。


「一ノ瀬くんじゃ紛らわしいだろ」


「……そっか」


確かに、言われてみればすごく紛らわしいかも。


自分もイチノセなのに、「一ノ瀬くん」って呼ぶのはずっと変な感じだった。


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