【完】キミさえいれば、なにもいらない。
そんなふうに言われて、嬉しくないわけじゃなかったけれど、そんなに褒めるほどのものでもないのになって思ってしまう。
うちは両親ともに遅くまで働いていて、何もしないお兄ちゃんの代わりに家事をしたり料理を手伝ったりするのがいつも私だったから、必然的に家事全般ができるようになったってだけで。
私は別に料理が特別好きなわけでもないから。
今だって、ただ実習の課題だから、黙々と作ってただけだし。
「形が綺麗だったらいいってものじゃないよ。料理だって、気持ちがこもってるほうが大事だと思う」
思わずそんなことを口にしたら、璃子はへへっとはにかんだように笑う。
「そっかぁ、いいこと言うね。ちなみに雪菜はそのクッキー、誰かにあげる予定あるの?」
「えっ、ないよ。全然!」
「なんでー?すっごく綺麗にできてるのに~。そうだ、遠矢(とおや)先輩にはあげたりしないの?」