【完】キミさえいれば、なにもいらない。
あらためてそう聞かれて、なんだかちょっと照れくさい気持ちになったけれど、私はコクリと頷いた。


「うん、いいよ」


すると次の瞬間、彼方くんが嬉しそうにガッツポーズを決める。


「やった!!」


その姿を見て、思わず顔がほころぶ。


それにしても私ったら、最初誘われたときは戸惑っていたはずなのに、不思議だな。今ではむしろ、一緒に行けることになってよかったなんて思ってる。


だって、彼方くんが私とお祭りに行くために、こんなに頑張ってくれるなんて思わなかったから。


自分のために一生懸命になってくれる彼を見ていたら、やっぱり嬉しかったから。


「あ、あとさ、もう一個だけ俺からお願いしてもいい?」


そこで彼方くんが、急に何か思いついたように一言。


「なに?」


私が問いかけると、少し照れたように言いだす彼。


「できれば当日、浴衣で来てほしいんだけど」


「えっ……」


「雪菜の浴衣姿が見たい」


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