【完】キミさえいれば、なにもいらない。
そして迎えた夏祭り当日。


私は彼方くんと約束した通り、浴衣を着て行くことにした。


紺色の生地にピンクの花柄がプリントされたお気に入りの浴衣を自分で着付け、一生懸命髪型をセットし、いつもより念入りにメイクをして。


髪型にもメイクにも、なんだかやけに気合いが入ってしまう。


男の子と二人きりで出かけるなんて久しぶりなので、今さらのように緊張してくる。


鏡で何度も自分の姿を確認してから、慣れない下駄を履いて、ドキドキしながら待ち合わせ場所に向かった。


約束時間の5分前、ようやくお祭り会場の最寄駅に到着すると、駅前の広場はお祭りに来たと思われる人であふれかえっていて、すぐには彼方くんのことを見つけられそうになかった。


すごい人だな。彼方くん、もう来てるかな。


キョロキョロとあたりを見回しながら、彼の姿を探す。


すると、ふと目にした先に、一人の男の子が女の子数人に囲まれている様子が見えて。誰かと思ったら、なんとそれが彼方くんだった。



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