【完】キミさえいれば、なにもいらない。
少し照れながら声を掛けたら、彼方くんはニッコリ笑って答える。


「いや、大丈夫。俺が早く着きすぎただけだから」


「えっ、何分前に着いてたの?」


「うーん、30分前くらい?」


「えぇっ!そんなに早く?」


信じられない。この暑い中、30分もここで待ってたなんて。


「だって、待ちきれなくて。少しでも早く雪菜に会いたかったから」


はにかみながらそう言われて、ドキッと心臓が跳ねる。


どうしてそういうことをサラッと口にしてしまえるのかな。


だけど、それだけ楽しみにしてくれてたんだと思ったら、やっぱり嬉しかった。


「……あ、ありがとう。ごめんね、待たせちゃって。そういえば、さっきそこにいた女の子たちは、知り合い?」


謝るついでに気になっていたことを聞いてみる。


すると彼は、ケロッとした顔で否定した。


「いや、全然知らない人。俺が待ってたら、なんか声かけてきてさ」


「そうだったんだ」



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